2022年11月1日、早朝4時。私は10体の大切なNFTを失いました。当日の時価にして150万円相当。
いったいなぜ、どうして盗まれたのか、対策はしていなかったのか、気になる人も多いでしょう。
詐欺被害の当事者として、経緯と、原因、そして対策(心構え編、ハード編)と、3回にわたってお伝えします。
誰しも心のどこかで「私は大丈夫」「私には関係ない」と思ってしまうものですが、その考えが一番怖いのだということが身にしみた出来事でした。
こうして、大切なNFTを失った
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ハロウィン当日。
有名インフルエンサーが創設したコミュニティの、NFTコレクションがリリースされました。優先販売分は4時間で完売。祝福ムードで大いに盛り上がりを見せたのです。
事件は翌早朝、コミュニティ内のDiscordに現れた、謎の「公式購入リンク」から始まります。
それがどんなクリックを促す画面や文言だったのか、情けないことに記憶はおぼろげです。それほど、さりげないリンクでした。
ただ、前日の完売を祝って、コレクションの象徴的デザインをあしらったものだったことはぼんやりと覚えています。だから、疑うことなくクリックしたのです。
それはつまり、「MetaMask」ウォレットと繋ぐことでした。そこには自分の所持している仮想通貨だけでなく、NFTも一緒に入っていたのです。
いま思えば、この時、私のNFTは盗まれたのでしょう。
その後、 とあるコミュニティの書き込みを見ると、「○○さんのコミュニティで、NFT盗難被害が出ているって!」の文字。
自分には関係ないだろうと思いつつも、念のため、ウォレットを確認しました。
すると? 国内最大のNFTコレクション 10体がありません。
ウォレットを見回わしても、何度見ても、ない……。
でも、その時点ではまったく実感がわきません。信じられない、確信が持てない、そんな心境でした。
その後、コミュニティの書き込みを見て、複数の方が盗難被害にあったことが分かったのです。 その時、初めて「やられたんだ……」と受け止めたのです。
焦燥感と喪失感で顔色が青白くなっていく様が、自分でもわかりました。そのとき実は家族の目の前でスマホを見ていたのですが、日頃、私のNFT趣味について、「仮想通貨なんて怪しい」と日頃から文句を言われています。
めまいがしそうでしたが、平静を保つしかありません。
気を付けて!詐欺は他人事じゃない
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今回の一件は、有名コミュニティの運営アカウントがハッキングされたことから始まったそうです。ハッカーがアカウントを乗っ取り、ニセのNFT購入リンクをあたかも公式であるかのよう仕込んだのだと推測されています。
Discord内だから、「公式リンク」と書かれているから、というだけで、私は詐欺リンクをクリックしました。うかつとしか言いようがありません。
新規NFTの販売時には、コミュニティの運営担当が決まって次のような注意喚起をします。
「マーケットプレイス『Opensea』に直接アクセスしてコレクション名で検索しないでください。必ずDiscord内の公式リンクを経由して購入するように」と。
だから、“Discord内の公式リンク=安全”といった、浅はかな認識を抱いていました。
まさか自分に限って。いつも気をつけているし(そう思っていただけ)、詐欺になんか引っかかるわけがないという油断と慢心が招いた、今回の盗難被害でした。
日本最大のNFTコミュニティ創設者のイケハヤさんをはじめ、多くのリーダーたちが日頃から、口酸っぱく注意喚起しています。
「せめてウォレットを購入用、保管用で2つのパソコンに分けて管理せよ」。
銀行口座なら2つ、決済用と貯蓄専用に分けるイメージです。
NFTも流動性のある金融商品の側面もあります。だから、決済して入手するたびに貯蓄用に転送する、と考えれば理解しやすいでしょう。
私の盗難被害は、極端なたとえ方をすれば、透明のバッグに分厚いお財布と、むき出しのジュエリーをつめて街中を歩くくらいの不用心さが招いた結果です。
大切なNFTを失ってわかった“本当の損失”とは?
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NFT盗難の悲しさは、購入した時の思い出やオーナー同士の繋がりを失うことです。
会員権も失うので、様々なコミュニティへのアクセス権や付加価値を得る権利もなくなります。、NFTは資産としてコレクションの値上がりを楽しむ側面もありますが、それもできなくなります。
後日、私が所有していたNFTが、マーケットプレイスのOpenseaに並んでいるのを発見しました。
盗まれた資産が目の前で、売りに出されている切なさときたら……57歳のオジサンの目が潤んでくる始末です。
先日まで、私のものだったと一目でわかるんです。慣れない購入操作で、苦労した末に手に入れたものばかりでした。毎日のように眺めて、癒されていました。なかでも働く姿をモチーフにしたNFTコレクション、ブロガーをあしらった個体には、執筆のたびに励まされていました。それなのに……
PCの画面を突き破って、取り返したいほどの悔しさ。しかし、Web3の世界では、そんなセンチな感情は通用しません。警察も誰も助けてくれない、まさに究極の自己責任の世界です。
この盗難被害を防ぐには、ごく基本的な対策をしていれば済むことでした。本当に、悔やんでも悔やみきれません。
これを読んでいる皆さんには、こんな思いは絶対にしてほしくないと思います。
引き続きNFTの盗難被害を防ぐ対策編では、マインド面とハード面に分けて解説します。